日々、忙しい日常の中から「30分間」の運動時間を何とかひねり出す。最初はこの30分間をウォーキングにあてて脂肪を燃やしていく。これが前回からの取り組みだ。ウォーキングは始めやすく、続けやすい。健康的な効果も大きい。日常的に運動をしていないビジネスマンが取り掛かるには優れた「運動」なのだ。
前回はこの30分間の脂肪燃焼効果を高める方法として、5kgのダンベルを背負ってみる、というトライを行ってみた。重い分だけ筋肉を使い、脂肪燃焼効果が高いのではないか、という発想からの取り組みだ。前回の計測では、消費カロリーで28%、脂肪燃焼で15%の増加を確認できた。想像していた以上の成果だ。毎回5kgのダンベルを背負うわけにはいかないが、脂肪燃焼をブーストさせる方法があることがわかったのだ。
今回は、30分間という時間限定を超えてしまうのだが、「筋トレ」を加えることで、ウォーキングの消費カロリーや脂肪燃焼効果がどう変わるのかを計測してみる。脂肪燃焼がブーストすれば儲けものだ。
これまで、代表的な基礎トレーニングとして有酸素運動、筋トレ、HIITを取り上げた。HIITは普段運動していないビジネスマンには辛すぎるので外す。残りは有酸素運動と筋トレだ。これはどちらも大切なので、最終的にはどちらも生活の一部にしたい。
問題はその組み合わせ方だ。ビジネスマンには時間がないので、確保できた30分間は最大効率で使いたい。
ちなみに、基礎トレーニングとしての筋トレと有酸素運動は、目的によって次の組み合わせで組み合わせが紹介されることが多い。
それぞれに目的があり、違う効果を狙っている。
ここでの目的は除脂肪だ。筋肉は落とさず(むしろ、増やしていきたい)、体脂肪だけを減らしたい。当面は、有酸素における脂肪燃焼量を増やす組み合わせを探したいわけだ。
今回は「30分間」を超えてしまうのだが、週末に1時間の運動時間が確保できたものとして、有酸素運動30分間と筋トレ30分間の合計1時間を、次の組み合わせで行って計測してみる。
運動の順序を変えるだけでは、結果が変わらない気もするが、とりあえず計測してみよう。運動はそれぞれ次のように設計した。
運動 | 内容 |
---|---|
ウォーキング | 傾斜15°、速度4km/hでトレッドミル(ランニングマシン)を30分間歩く |
筋トレ | ベンチプレス10セット、ラットプルダウン10セット、アブクランチ3セット。インターバルは30秒で、30分間で追い込むスタイル |
トレッドミルに15度の傾斜をつけて実際に道を歩いているのと同じような負荷にした。この傾斜でちんたら歩ける最大速度が4km/hだったので、この速度だ。何事も辛いと続かないので、緩やかなところを狙っていく。
筋トレは30分間で上半身を行った。下半身の筋トレを行うとウォーキングに影響しそうだったので、下半身は避けた。大雑把だが、ベンチプレス、ラットプルダウン、アブクランチで上半身に一通り刺激を入れるイメージだ。もっと時間を短くするなら、ラットプルダウンをチンニング(懸垂)に変えればよいだろう。
では、早速計測結果を見てみよう。結論から見ると、次のようになった。
筋トレ前 | 筋トレ後 | |
---|---|---|
総消費カロリー | 236kcal | 268kcal |
脂質消費カロリー | 136kcal | 139kcal |
脂質消費割合 | 58% | 52% |
平均心拍数 | 110bpm | 119bpm |
最大心拍数 | 122bpm | 125bpm |
わかりやすいように、比率で見ると次のようになる。
筋トレ前 | 筋トレ後 | |
---|---|---|
総消費カロリー比 | 1 | 1.13 |
脂質消費カロリー比 | 1 | 1.02 |
脂質消費割合比 | 1 | 0.89 |
平均心拍数比 | 1 | 1.08 |
それほど変わらないだろうと思っていたが、筋トレ後にウォーキングをしたら、消費カロリーが13%増え、平均心拍数が8%増加した。
筋トレ前のウォーキングと、筋トレ後のウォーキングについて、心拍数の違いを見てみよう。次のスクリーンショットは筋トレ前と筋トレ後の心拍数の変動の様子だ。
わかりやすいように2つのグラフを重ねると、次のようになる。筋トレ後のウォーキングのほうが心拍数が高い状態にあることがわかる。
同じことを脂質と糖質の燃焼で比較してみると、次のようになった。
こちらのグラフを重ねると次のようになる。脂質の消費はそれほど変わっておらず、糖質の消費が増えている。
この結果からは、あくまで著者の場合ということになるが、「ウォーキング前に筋トレをすると、カロリー消費が10%以上増え、糖質の消費が増え、心拍数が高くなる。ただし、脂質の消費はそれほど変わらない」、ということになる。
ただし、注意は必要だ。今回は筋トレ側の比較を行っていない。ウォーキング前の筋トレと、ウォーキング後の筋トレで、筋トレの方の消費カロリーがどう変化するか、これも含めないと全体でどう変わるのかがなんとも言えない。今言えるのは、「筋トレあとにウォーキングを行うと、心拍数が上がりやす行く、糖質の燃焼が増える」ということかなと思う。
なお、筋トレの消費カロリーに関しても表に含めると次のようになる。
筋トレ前 | 筋トレ | 筋トレ後 | |
---|---|---|---|
総消費カロリー | 236kcal | 193kcal | 268kcal |
脂質消費カロリー | 136kcal | 125kcal | 139kcal |
脂質消費割合 | 58% | 65% | 52% |
平均心拍数 | 110bpm | 102bpm | 119bpm |
最大心拍数 | 122bpm | 123bpm | 125bpm |
筋トレ前 | 筋トレ | 筋トレ後 | |
---|---|---|---|
総消費カロリー比 | 1 | 0.81 | 1.13 |
脂質消費カロリー比 | 1 | 0.91 | 1.02 |
脂質消費割合比 | 1 | 1.12 | 0.89 |
平均心拍数比 | 1 | 0.92 | 1.08 |
なんと、ウォーキングよりも筋トレのほうが脂質の燃焼割合が高い。傾斜15度速度4km/hは筋トレよりも糖質が燃えるようだ(もちろん著者の場合だ。筋肉量でこの数値は変わると思われる)。筋トレの総消費カロリーはウォーキングよりも減るが、それでも7割~8割程度だ。有酸素運動が嫌いな場合は、筋トレだけでも除脂肪を進めるのは十分可能であることもわかるのだ。
物は試しということで、筋トレ後30分のウォーキングを終えたあとに、さらに追加で30分のウォーキングを行い計測してみた。結果は次のとおりだ。
表にまとめると、次のようになる。
筋トレ前 | 筋トレ後 | 筋トレ後+α | |
---|---|---|---|
総消費カロリー | 236kcal | 268kcal | 301kcal |
脂質消費カロリー | 136kcal | 139kcal | 138kcal |
脂質消費割合 | 58% | 52% | 46% |
平均心拍数 | 110bpm | 119bpm | 125bpm |
最大心拍数 | 122bpm | 125bpm | 132bpm |
筋トレ前 | 筋トレ後 | 筋トレ後+α | |
---|---|---|---|
総消費カロリー比 | 1 | 1.13 | 1.27 |
脂質消費カロリー比 | 1 | 1.02 | 1.01 |
脂質消費割合比 | 1 | 0.89 | 0.79 |
平均心拍数比 | 1 | 1.08 | 1.08 |
わかりやすいように、筋トレ後のウォーキングの計測結果グラフをくっつけると、次のようになる。
ウォーキング1時間目くらいまで徐々に心拍数が上がっており、それに伴って糖質の消費割合も増えている。一方、脂質の消費割合はほとんど増えていない。消費カロリー自体は増えているのだが、脂質の燃焼はあまり変わっていないようだ。
除脂肪を進めたい場合によく言われる組み合わせは、「筋トレのあとに有酸素運動をやる」だ。この取り組みの考え方は、「筋トレで糖質を使い、そのあとに有酸素運動をすることで脂肪が優先的に燃えるようにする」というものだ。以前はこの考え方が定説と見なされていた。
しかし、この考え方はどうにも疑問が残る。スマートウォッチで計測してみると、筋トレで消費される糖質はそれほど多くない(もちろんスマートウォッチの値が間違っていたら、この論理は成り立たないのだが)。先に筋トレを行うことで後の有酸素運動の脂肪燃焼率が増えるとは、スマートウォッチの数字を見る限り、効果があるのかないのか疑問だ。
最近は、筋トレを行ってから有酸素運動をすると、筋肉の減少を抑制できるほか、心拍数が上がりやすくなる、と言われることが増えたように思う。この考え方は今回の計測結果と齟齬が少なく、ストンと納得できる。心拍数を上げたい場合は、筋トレ後に有酸素をするというのは手ではないかと思う。
今回の取り組みは、今後の計測のアイデアを与えてくれる。例えば「筋トレを上半身ではなく、下半身を中心にしたらどう変わるか」「筋トレ目線で筋トレの効果を上げるには筋トレの前に有酸素運動をすべきか後にうべきか」などだ。スマートウォッチで計測すると、いろいろなことが見えてくる。実際に計測してそれを自分の生活にフィードバックしていく。スマートウォッチならではのライフハックだ。